作品「 Theory of the Earth セオリー・オブ・ジ・アース


和楽器三味線の魅力が最大限に発揮され、チェロがうなり、オーケストラが競演、融合一体化したソッリマの大作。
元々、本作品は2005年に三味線奏者の西潟昭子より委嘱されたもの。今回、満を持して、再アレンジして再演される。
ソッリマは本作品に取り組むにあたり、世界一美しいと言われる富士山、そして、故郷シチリアのヨーロッパ最大の活火山、エトナ山に想いを馳せ、天空にそびえる2つの火山と地球の活力を壮大に描いた。和と洋がせめぎあい、競い合い、エトナ山にまつわる多くの神話や伝説がまるでオペラのような映像的、ドラマティックな音群で想起されるこの傑作はまさに“地球の音楽”と言える。
楽曲タイトルはスコットランドの地質学者ジェイムズ・ハットンの著書から触発された。



曲目解説

 これまでサンプリングされた三味線音源を使ったことしかなかった私は、西潟昭子さんから三味線のための作品を書くように頼まれた時、三味線の新しいサウンドやフィーリングに冒険的に取り組む可能性への興奮と、西洋の楽器とはかなり異なり日本の伝統と強く結びついているこの楽器との初めての出会いへの恐れを感じました。ただ同じ弦楽器であるチェロを弾いていること、シタールを何年か前に学んだこと、あるいはまた子どものような好奇心のために、三味線には親しみを同時に感じました。
 昨年(2004年当時)東京でお会いした折、西潟さんは三味線の生の演奏を聴かせてくれたあとで、竹内敏信さんの美しい富士山の写真集を見せて下さいました。そこには幻想的な神話、様々な光と影、魔法のような物語、花々や木々などが様々な角度から描かれていて、それを見ながら私は、三味線を取り巻く弦楽器群のイメージを感じ取りました。
 今年(2005年)の4月、より深くこの作品について考えはじめた私は、やがて私の住むシシリー島に近い、嵐の吹き荒れる小さな火山の孤島を思い描きました。そして私の中に嵐が吹き始めました。
 「セオリー・オブ・ジ・アース」は、地球上の陸地の創生について記した、スコットランドの地質学者ジェイムズ・ハットン(1726-1797)の著作に触発された題名です。しかし作曲においては、二つの火山…富士山とエトナ…と、そこで営なわれて来た儀式、宗教、人々、物語、神話などに焦点を当てています。ただ、人間、動物、エネルギーと火山との抽象的な関連性によって、各楽章は題名を持たずにそれらを表現しています。
 この作品は、原始的な要素と遅い部分を持つ4つの楽章が、それぞれ互いに強く関連付けられている協奏曲です。時折遠心力を持つ球形の構造形態には、流動的な木の形態をも感じられるかもしれません。非常に原始的な作品であると感じていますが、「非常に原始的であること」によって、私のこの作品は生まれたのです。

ジョヴァンニ・ソッリマ
(『邦楽演奏家 BEST TAKE 西潟昭子V 三味線とオーケストラの出会い』ライナーより)