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ジョヴァンニ・ソッリマ
特別公演2020「地球の躍動」公演記念

幻の傑作「 Theory of the Earth セオリー・オブ・ジ・アース
極音試聴会&トーク・イベント

2020年2月22日(土)@四谷いーぐる


ジョヴァンニ・ソッリマ作の幻の傑作「Theory of the Earth」を最高の音で体験し、この楽曲の魅力を探るトークはとても充実した内容で会場満員の大盛況でした!音楽評論家の松山晋也さん、小室敬幸さん、今回の特別公演の出演者、ユキ・モリモト(指揮)さん、野澤徹也(三味線)さんを迎えて、この楽曲を掘り下げ、聞きどころを解説していただきました。生命力に溢れ、地球の躍動を体感させてくれるこの作品の真髄に触れる午後でした。






〈トーク内容抜粋〉

ソッリマの音楽性

ソッリマの音楽的な表現の核になるものは「旅」だと思うんです。実際の現実的な旅もそうだし、メタファーとしての旅もそうですね。「あらゆるボーダーを超えていく旅人」と定義づけられるんじゃないかな、と思います。
ソッリマのお父さんも有名な作曲家でありピアニストで、子供の頃からバロック時代のような教育を受けていたようで、それはどういうことかというと、演奏家はイコール作曲家だ、ということなんです。当時はそれが普通だったんですが、やっぱり彼はそのスタイルでずっと活動してきてて、それでまさに今回のこの作品の三楽章でバロック的な方法論を展開したんだな、という風に思います。(松山晋也/音楽評論家)

インタビューをしたときに、自分のことをどう認識しているのですか、という質問をしたときに、「常に何かを探し求めている人間だ」と言っていました。そのことが尽きぬ好奇心に繋がっているんだ、と思いました。
事前に楽譜を見せていただいたのですが、全四楽章ありまして、「速い、遅い、速い、遅い」という順番になっていまして、コントラストが分かり易く書かれています。各章の聞きどころですが、第一楽章は核となるミニマルな要素が出てくる箇所なのですが、この最後の箇所で楽譜には「ディストーション」と記されています。ここを本番では三味線にエフェクトをかけた形で演奏されるか検討中のようです。三、四楽章になるとチェロのソロが出てきます。これは先に録音を聴いてあとで楽譜を見て驚いたのですが、独奏チェロのパートが何も書かれていないんです。つまりこの部分は完全に即興なんです。そこを感じていただけると、あ、このパートは即興で演奏しているんだ、とわかると思います。(小室敬幸/音楽評論家)


「チェロと三味線のデュエット(対話)」としての作品

この曲の四楽章というのは、三楽章から出てきたチェロとそれぞれモノローグを弾いた後に、ついに一緒に二人でダイアローグというか、一緒に演奏するわけですけれど、それを聞いていると思い出すのがソッリマの代表曲である『チェロよ、歌え!』なんですね。あれはバックに伴奏があって、2本のチェロのソロが曲な訳ですが、この作品も『チェロよ、歌え!』のように三味線とチェロのデュエットのように聞こえてきました。(小室敬幸/音楽評論家)


三味線の「さわり」を理解した作品

弦楽器というのは西アジア、今のパレスティナあたりが発祥と言われていて、この弦楽器が生まれたところではみんな「さわり」があるんです。でこの弦楽器が北アフリカ経由で、ジブラルタル海峡を渡ってスペインに入りヨーロッパに行った時に、このビーン(さわり)がなくなってしまった。これがあると、いわゆるドミソ、ドファラ、という和音を作りにくいんですね。和音にとっては余計な、とても複雑な倍音が出ているんです。ですから西洋には「さわり」はなくなっていったんです。ですが、ジョヴァンニのチェロもジョヴァンニの声も、非常にその「さわり」っぽいノイジーな、ざらっとした響きがあるように思うので、三味線を理解できたのではないでしょうか。(ユキ・モリモト/指揮者)


またこの日は公演に出演する三味線奏者野澤徹也さんの実演もあり、三味線の「さわり」の音をより実感できました。




今回の極音視聴会&トーク・イベントを通して、この作品は、三味線とチェロのデュエット(対話)の中に「西洋と東洋の対話」、そして「地球の鼓動や大自然の営み」という大きな概念を持ち合わせている作品だという理解をより深める会となり、またソッリマの自然に対する研ぎ澄まされた感覚からくる三味線の「さわり」への理解の深さを実感する特別な機会となり、ますます本番が楽しみになる一日でした。

トークにご来場していただきました皆様、トークにご出演していただいた松山さん、小室さん、森本さん、野澤さん、ありがとうございました。
また素晴らしい音響システムと空間を提供していただいた四谷いーぐる様に感謝を申し上げます。